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【後編】表参道·原宿:”素材達”シリーズ 「その3」 …時代を写す”コンクリート”達

【後編】表参道・原宿:“素材達”シリーズ「その3」 ...時代を写す“コンクリート”達

"コンクリート"はほのぼの

キャットストリートから脇道を入いると縦方向の型枠で
コンクリートと緑色に塗り分けされた建物が建っています。
お米屋さんの建物で、稲穂を連想する色分けがユニーク。

肩の力が抜けてほのぼのしてしまいます

それではここでちょっと小腹が空いてきたので、おにぎりをほおばりましょう。

"コンクリート"はぶつかる

一転して緊張感漂う建築。北川原温設計の395です。

コンクリート打放し面とそれに対照的な白御影石、金属パネルなどの
素材がぶつかり緊張感有る独特の雰囲気を作り出しています
北川原氏の造形センスはオリジナリティー溢れ魅力的です。

“コンクリート”は表情豊か

蛇籠(じゃかご)を外壁に配した建築です。蛇籠の中は砕石が詰まっています。

蛇籠は本来川の護岸のために使われていました。
砕石は大きな石をクラッシャーで砕いて作るので角張った石です。
この砕石をコンクリートに使い表面を斫って(はつって)仕上げた壁が
丹下氏設計の香川県庁舎にありシャープな表情を作っています。

それを見たアメリカの建築家ポール·ルドルフが触発され自らの建築の仕上げに大々的に取り入れ
ルドルフの建築の代名詞にもなりました。

一方で尖った砕石の代わりに丸い石を使うこともあります。

コンクリートに入れる骨材としてではありませんが、仕上げ材として使った例として、
ル·コルビュジェ設計の上野の国立西洋美術館の外壁があり、これはまた違った豊かな表情を生み出しています。

“コンクリート”は起爆剤

フロムファーストビルは元祖みゆき通りの個性派建築のはしりです。

このデザインを見てあっと驚いたものです。
建築の役所申請の際に図面だけでは理解が難しいだろうと
模型を役所に持ち込んで説明したそうです。

Herzog & De MeuronのPRADAに先立つこと30年近く。
ハイセンスなエリアの起爆剤です。

設計者の山下和正氏は元組織事務所ながらアトリエ的センスを持った設計者でした。

“コンクリート”は姿勢

キラー通りまで足を伸ばしてみましょう。東孝光設計の塔の家。

予算ぎりぎりの20㎡の極小敷地に地上5階地下1階のまさに塔の様な家。

以前都市住宅と言う建築誌がありました(‘68‘86発刊)。
都市に建つ提言溢れる住宅を採り上げ、磯崎新氏、杉浦康平氏のデザインによる表紙も魅力的な雑誌でしたが
そのまさに都市住宅

コストを切り詰めるために打放しコンクリート、鉄製サッシの仕上げは錆止めのみ、
内部階段もコンクリート剥き出しの上にゴムシートを張っただけの強烈な都市に住むのだと言う強烈な姿勢の表明。

向い側にはマリオ·ボッタ設計のワタリウム美術館。

きれいな打放しコンクリートの幾何学形のギャラリー建築。

ボッタの作品は世界的に見ても余り多くはなくその貴重な一つです。
表参道には槇さんのスパイラルがありますが、この二人の共演は
表参道とサンフランシスコだけではないかと思います(多分…)。

"コンクリート”は現役

少し戻ってからさらに道を進むと、あった! 

イタリア人建築家アルド·ロッシ設計の旧アンビエンテ本社ビル(現ジャスマック青山)。

バブル時期とは言え、有名建築家の作品。青色の大理石が美しい!

建設されたのはバブル真っ盛りの‘91年であったので
失礼ながら取り壊しされたとばかり思っていましたが、
しっかり現役で活躍していて嬉しくなりました。

同じくバブル真っ最中に建てられた建物に結晶のいろ:髙﨑正治設計があります。
残念ながらバブル経済崩壊後にあっという間に解体されました。
バブル経済が設計の機会を生んだとは言え設計者が心血を注いで設計した建物が
完成後一度も使われる事なく早々に取り壊されてしまったのには心が痛みます。

一方で環八沿いの隈研吾氏設計のM2が現在も用途を変えながら活躍しているのを見ると
ちょっと複雑ですが安堵します。

。。。

さて今まで3回にわたりオモハラの素材達
達、ガラス達、コンクリート達を見てきました。

単なる素材としてではなく、
その場所ならではの活用方法、新たな技術、
空間への挑戦を創り出す立て役者として活躍しています。

そして中には解体されてしまったもの、
そしてあるものは今だ現役であったりと建築は機能を超えて
時代と共にあるものだとつくづく思います。

こうした思いを抱いて建物を
見たり以前建っていた建物を想い出しつつの街歩きもまた楽しいのではないかと思います。
(そして是非私達のリアルのツアーにもご参加下さい。)



それでは又みゆき通りに戻って青と白のタイルの美しいヨックモックの中庭で
素材達のこれからに思いをはせながらお菓子と珈琲を頂きましょう。

About me
Yasuo Nakamaru
Yasuo Nakamaru

1956年神奈川県生まれ。横浜国立大学大学院建築学卒業 一級建築士 全国通訳案内士(英語)
38年間にわたり組織設計事務所で国内国外の建築設計・監理に従事(米国、英国、中国他)

好きな建築:
ナショナルギャラリー東館(ワシントンDC、USA、I.M.ペイ)、キンベル美術館(フォートワース、USA、L.カーン)、金沢21世紀美術館(SANAA)

趣味:
バンド活動(バンマス、エレキベース、分野:ジャズなど)

建築専門家向けツアー、企業研修などで活躍中

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