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表参道・原宿“この木なんの木”…気になる”木”達 前編

表参道・原宿
“この木なんの木”...気になる“木”達 【前編】

表参道・原宿(オモハラ)には新旧たくさんの魅力的な建物があります。
ここではそうした建物をあるものを通して見てみようと思います。

さて表参道・原宿のシンボルと言ったら何が思い浮かぶでしょうか。
やはり一つにはケヤキ並木や明治神宮が挙がるのではないでしょうか。
共にが共通事項ですがこうしたその土地のシンボルや
イメージは設計者が設計を進める際に大変大事にする点です。

そこでここではこうしたオモハラのに注目して
建物の設計への関わり方、更に木自身の目からオモハラを見たらどう見えるか等、
木と建物の関わり方に目を凝らして をキーワード
そして時には木の気持ちになってそぞろ歩きをして見ました。

そうしたらいろいろな達の生態が見えてきました。

”木”は蘇る

JR.原宿駅より神宮橋を渡ってすぐ、そこは鬱蒼とした森に囲われた明治神宮です。

表参道を空から見てもまず目に入るのは明治神宮の圧倒的な緑の存在です。

ここは今でこそ立派な森になっていますが、
わずか100年ほど前迄は単なる平地だったのですがご存じでしたか。

明治天皇、昭憲皇太后を顕彰して創立された明治神宮の森の創出には
林学博士達の実に綿密な樹木植栽計画が有りました。
最初は針葉樹、次第に広葉樹にとの変遷を盛り込んだ計画です。

日本中から約10万本の献木がなされた一大事業でした。
ちょうど新国立競技場が全国から木材を集めて
建物の庇全周に設置したのを彷彿とさせます。

維持管理に関しても細心の注意が払われていますが、
木々の伐採はやむを得ない場合のみであり
また面白い事に落ち葉に至っても出来るだけ庭園内に還す事としています。

早朝に行われる参道の落ち葉掃きで集められた葉も
廃棄するのでなく庭園に還すそうです。

こうして見事に成長、循環、再生を達成しています。

同時にそれを支えるためにいかに多くの人の手が入れられているかも
併せて覚えておきたいです。
こうした地道な積み重ねが今日の豊かな森を都会に確立しているのですね。

また大鳥居の足下にCAFÉが有りますが、
その建物の一部や家具に枯損木が活用されています。
こうして明治神宮の木は新たに姿を変えて蘇っているのです。

そうした事に想いを巡らせながらCAFÉで珈琲を飲むのもまた格別です。

明治神宮ミュージアム2019年に隈研吾氏設計で新設されました。

この建物でもロビーに設置されている木製のベンチは
明治神宮の伐採された立木を活用したものです。

”木”は招く

明治神宮を後にして表参道を南に下り始めると
交差点左手の建物の屋上に木々が繁っているのに気づきます。
一体上はどうなっているのか、俄然好奇心が湧いてきます。

で気づいたらキラキラのエスカレーターに乗って屋上に来ていました。

この東急プラザ表参道原宿の屋上には木が植えられているのです。
と言うかまず木在りき、その余白に建物がある。

Photo courtesy of Hiroshi NakamuraNAP

屋上は何と気持ちの良い空間、
そして緩やかな一体感が醸し出される心地良いウッドデッキの空間。
この囲まれ感、すり鉢状のデッキが心地よい空間を作っています。

この建物、遠目にはまるでルネ・マグリットの絵のような超現実的な外観、
上に上がると都会の喧噪を忘れる憩いの場、
この心地よい木立の空間を見て
ニューヨークにあるポケットパーク(小さな憩いの広場)のはしり
ペイリーパークを思い出しました。

ここで飲む珈琲もまた格別なんですよね。

Photo courtesy of Hiroshi NakamuraNAP

この建物は成り立ちからして全てが逆の発想から生まれています。
普通は商業地区では採算上1階を最重視して計画します。
土地に余白があれば植栽と言うようになりがちです。
設計者の中村拓志氏によるとまったく逆の発想で
まず緑地を作ろう、そしてその隙間に建物を配しています。

そのためにいかにしたら人を屋上まで招き込む事ができるかに腐心。
単に植栽をもうけるだけで無く
通りから緑地を見える様にして人を招き入れるような演出が成功しています。

実は中村氏はケヤキ並木にインスパイアされ
屋上の“おもはらの森を目指しました。

”木”と歩む

明治神宮への参道が文字通り表参道です。

表参道を歩いてまず気づくのは、
何と言っても表参道のシンボルであるケヤキ並木の存在です。
1919年の表参道整備時に200本植えられたのが始まりのようです。

先の空襲の際に大部分消失してしまったそうで、
その後植え替えられました。

このケヤキ並木を見るのに一押しのスポットは
何と言っても横断歩道橋からの眺めです。

ここから見るとケヤキ並木の高さが
きれいに揃っているのが分かると思います。

表参道が歩いて心地よいのは
道路の幅に比べて両側の建物が相対的に低く、
さらにケヤキ並木がリズミカルに植えられていて
楽しく歩ける心地よい雰囲気を醸成しているからと私は思います。

参考までに銀座ですと道路幅が広く建物も規制されているとは言え
ずっと高くフォーマルでクルマのスケールを感じます。

二つの通りを比べるとそれぞれの街の性格の違いが面白いです。

 

尚、この表参道は冬至の日の出の方角を向く様に計画されたそうです。

昨年Showcase有志が凍てつく冬至の早朝に果敢にもそれを検証しました。

”木”と立つ

そしてケヤキ並木に沿って“立つ”のが安藤忠雄設計の表参道ヒルズ

設計にあたって安藤氏は
建物はケヤキを超えない高さに抑え ケヤキ並木との共存を図り
表参道の大きな心地良さの一つのヒューマンスケールを確保しています。

その結果地上3階に高さを抑えました。
一方床面積を確保するために地下を3階まで掘り込みました。
地下工事は地上の工事に比べて3倍大変と良く言いますが、
地下3階まで掘ったそのエネルギーに圧倒されます。

リズミカルなケヤキ並木と緩やかな勾配の道がこの建物を決定づけています。

もう一つの建物、
それはケヤキのモチーフを建物ファサードへ取込んだ
伊東豊雄設計のTOD’S表参道ビル(現 Kering Building) です。

全てのファサードを繋げると9本のケヤキ並木が出現します。
一つも水平垂直が無く通常の柱梁構造でない構造面の挑戦であり
上に行くに従って細いのは構造的合理性も有ります。

外壁は厚さを30センチに抑え、ガラスは外壁面とフラットに納めています。

伊東氏はガラス面が外壁より奥まってしまうと
外壁面の樹形が余りに具象的過ぎて生々し過ぎるとして
ガラス面を出来るだけ外壁と面一(つらいち)なるようこだわったそうです。

ガラスを象嵌の様に外壁面に納める事を達成するために
ガラスとコンクリートの隙間を巡って5ミリを希望する設計者と、
施工性を考慮し15ミリを希望する施工者、
ガラス屋さん間のせめぎ合いが有り
結果として間を取って8ミリに落ち着いたそうです。

また、伊東氏はTOD’Sでの構造アイデアを
更にMIKIMOTO Ginza 2へ鉄板コンクリート構造として
発展させています。

尚、表参道ヒルズとTOD’S共に
そのコンセプトの実現に貢献している技術が免震構造です。
建物本体と基礎との間に積層ゴムを挟み地震力を低減するもので、
この技術を採用する事で設計者の意図を
より明確に形に反映する事が出来ました。

…ここいらあたりで脇道に入ってみましょう。
まだまだ面白い“木達”がいますよ。

About me
Yasuo Nakamaru
Yasuo Nakamaru

1956年神奈川県生まれ。横浜国立大学大学院建築学卒業 一級建築士 全国通訳案内士(英語)
38年間にわたり組織設計事務所で国内国外の建築設計・監理に従事(米国、英国、中国他)

好きな建築:
ナショナルギャラリー東館(ワシントンDC、USA、I.M.ペイ)、キンベル美術館(フォートワース、USA、L.カーン)、金沢21世紀美術館(SANAA)

趣味:
バンド活動(バンマス、エレキベース、分野:ジャズなど)

建築専門家向けツアー、企業研修などで活躍中

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