建築ワンダーランド① 上野公園
昨年 上野駅の公園口改札が移動し、
駅を出てからテーマパークに入っていくような印象に変わった上野公園。
動物園好き、美術館好き、お花見好きには馴染みの深い場所ですが、
実は建築好きにもたまらない公園です。
ネオバロック様式建築からモダニズム建築、レンガ作りのリノベーション建築まで見放題!
今日は上野公園に行った際にはぜひ立ち寄って欲しい建築をご紹介します!
目次 ====================
日本の建築の歴史が一気にわかる国立博物館ゾーン
明治代表 表慶館
昭和代表① 東京国立博物館 本館
昭和代表② 東洋館
平成代表 法隆寺宝物殿
見るもの多すぎ 一日終わる
国立科学博物館
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日本の建築の歴史が一気にわかる国立博物館ゾーン
国立博物館の敷地内には写真の国立博物館(通称トーハク)だけでなく、
さらに6つの施設と日本庭園と茶室があります。
すべては紹介しきれないので、今回は明治から現代まで、
約30年おきに建てられた建築に絞って紹介します!
明治代表 表慶館 (1908年)
設計者、片山東熊のエネルギッシュな鉄骨補強レンガ造石貼。
一見ネオバロック様式ながら、階段脇の阿吽の青銅製ライオン像など日本的意匠がたくさん隠されているのを見つけるのも楽しい建築です。
“建築物は芸術作品でなければならない”という片山東熊の言葉通り、
外見の華やかさだけでなく内部にもかなりこだわりが感じられます。
一番の見どころ、中央ドームが吹き抜けるエントランスホールの開放感と細かい装飾、
滑らかな曲線をえがく階段、人工照明が整っていない時代の天窓からの柔らかい光はいつまでも眺めていられます。
不定期公開施設のため是非開いている時を狙って行ってみてくださいね。
昭和代表① 東京国立博物館 本館 1937 (再建)
日本で最初に美術館を名乗った場所。
侍の兜から、襖絵、陶磁器、仏像、まで 海外の観光客の方の見たい日本は
ひとまずここに詰まっています。
現在の本館以前には実はお雇い外国人建築家、コンドル設計の
煉瓦造りの博物館がありました。
ところが1926年の関東大震災で倒壊。
ヨーロッパの先進的なデザインを真似た煉瓦造りは、
地震国日本では同じようには作ることができないことが判明します。
再建計画が持ち上がり銀座WAKOのデザインも手掛けた
渡辺仁の設計案が採用されました。
戦時中の国家主義的な思想の影響により、
元設計よりもかなり誇張された装飾と反り屋根の日本的な雰囲気の博物館が完成。
車寄せを正面に向かせ、噴水広場から直線的な配置にすることで
見る者にこのエリア一帯の主役が誰かを一目でわからせる効果が加えられました。
あの堂々とした雰囲気は時代に翻弄された結果のデザインだったとわかると見方も少し変わりますね。
館内にはドラマにもよく登場するあの大階段を見ることができますよ。
昭和代表② 東洋館 1968 谷口吉郎
中国、朝鮮半島、アジア、インド、エジプトなどの美術品を展示。
日本の伝統的木造建築の神殿造をモチーフとした高床の構造。
緩やかな勾配の切妻屋根、正面の柱列、周囲にめぐらせた庇をかねる大きなテラスなど、
和風の外観が印象的です。
館内の1−5階までの吹き抜け空間とスキップフロア* は
暗めの照明の効果と相まって神殿に迷い込んだような面白さがあります。
*同じ階層の中に複数の高さの床があり、部屋や区画によって天井の高さが変わる間取りのこと
平成代表 法隆寺宝物殿 1999 谷口吉生により新築
廃仏毀釈運動で危うく消えてしまう運命にあった法隆寺の宝を収納する美術館。
四角い箱のような外観は宝物を保護するために用いられた伝統的な入子細工から着想されました。
7世紀からの古美術コレクションと現代建築のシンプルなデザインの調和が素晴らしいのですが、
エントランスから息をのむ仕掛けに足が止まります。
入り口までの水盤の美しさはまるで水の中を歩いているような浮遊感!
吉生はこの建築の竣工をきっかけにMOMAニューヨーク近代美術館新館の
設計競技に指名され、手掛けることになりました。
前述の東洋館の設計者、谷口吉郎は吉生の父。
親子の共演が身近に見られるのも楽しいですね。
見るもの多すぎ! 一日終わる国立科学博物館
国立科学博物館 1931 文部省大臣官房建築課
恐竜からハチ公、人類の進化から宇宙まで子供も大人も楽しい博物館。
中央に車寄せを配置したネオルネッサンス様式の県庁のようなルックスに
一瞬 怯んでしまいそうになりますが、
勇気を出して近付いて見ると
暖かい色むらのスクラッチタイル* のファサードと
局面仕上げの石が柔らかい印象で、思っていたより怖くありません。
あいにく、現在は車寄せの正面玄関から入ることはできませんが、
ちょうどこの扉の向こう側にある日本館の吹き抜けホールは圧巻。
ドームを中心にぐるっと回廊が配置され、
それぞれの階から天井の伊東忠太の図案をもとに作られた
小川三知デザインの鳳凰モチーフのステンドグラスやグラスモザイク、
天井部や壁面の漆喰やタイルモザイクによる装飾をじっくり鑑賞することができます。
上の写真の日本館だけでも展示ボリュームはすごいのですが、
別館地球館も見所がたくさん。
展示と建物を一緒に見るのはかなり時間と体力がいるので要注意です!
*櫛で引っ掻いたような細い溝の模様のあるタイル。昭和初期に流行した。